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キャリアパスの“見える化”で技術者の成長を促進し ナノレベルの“溶射”を極める。  -倉敷ボーリング機工-

倉敷ボーリング機工株式会社

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倉敷ボーリング機工は様々な製品や部品等に溶射などの表面処理機械加工をしています。製紙・フィルムや印刷関係、プラント、造船、航空機関係など幅広い業界のお客様のニーズに対し、技術力を武器としたソリューションを提案してきました。
今後はさらにその技術力を伸ばし、「ナノレベルの専門集団」として、難易度の高い加工技術に対応することや、ソリューション営業を進化させ様々な領域でのニッチトップを目指しています。そのため同社では専門性の深化を社内で推進するために様々な取り組みを始めました。

代表取締役 佐古 さや香

【事業の現在】
複雑形状や大型部品も処理可能な“溶射”のスペシャリスト

溶射という技術がある。金属やセラミックなどを溶かして素材に吹き付け、表面に皮膜を形成する技術のことだ。1500年以上の歴史を持つめっきや溶接と比べ、約100年の溶射は、かなり新しい部類だ。
「大学や工業高校でも、溶射はほとんど取り扱っていません。しかし溶射には、めっきや溶接にはない長所があるんです」
と語る、倉敷ボーリング機工社長・佐古さや香氏。めっきは、対象の素材をめっき液で満たした四角いプールに浸す。素材がプールより大きければ液に浸せないし、複雑な形状だと液が行き渡らないこともある。
これに対し溶射は、どんな複雑形状でも処理が可能。大きさにも制限はない。また溶接のように素材を高熱に触れさせることもないので、材質を変性させずにすむ。素材への影響を最小限に抑えつつ、皮膜を形成できるのだ。
「新しい技術である溶射を行える会社は、国内に50社程度しかありません。中でも倉敷ボーリング機工は、溶射の前工程となる切削加工も、溶射を行った後の研磨加工も対応できます。3工程全てを自社内でまかなえるのが、大きな強みです」

将来の方向性
ナノオーダーへの対応力を高め新分野での売上を確保

溶射が求められるのは、石油化学プラント用部品や製紙用ロール、半導体製造設備や医療機器、航空機。高度な耐久性と機能の両立を必要とする部品が多い。
「耐摩耗性・耐熱性・耐食性を上げたいという要望が中心ですが、部品の高機能化を求められる案件も増えています。例えば電気特性を変えたり、表面の円滑性を高めたり。今やナノオーダーも珍しくないですね。難しいですが、ハイレベルの技術に対応していかないと、発展はありません。毎年、売上の10%は、新しい取引によるものにしたいんです」
2020年には、事業戦略推進室を新設した。ここは、今までにない事業の芽を見出したり、顧客との関係を深耕することで新たなニーズを引き出すなど、長い目で市況を捉えた戦略の立案と推進を役割とする。
「どこから芽が出るかわからないので、研究開発部門と連携しながら基礎データを揃え、理論の構築を始めています。Web活用によるものづくりの新たな仕組みなど、多岐にわたる活動を推進したいと思います」
と、佐古氏は将来を見据える。そのために必要なのが、社内体制の整備だ。手始めとして、開発・製造・営業など様々な部門の業務を洗い出し、細分化しようとしている。

研究開発部 曾 珍素 氏
研究開発部 𠮷和 あかり 氏

働き方改革
熟練者と若手のペアによりコア技術の伝承をスムーズに

業務細分化は、製造部門で先行して進んでおり、一つの業務だけではなく、様々な業務に対応可能な多能工を育成できる環境が整いつつある。一方、言語でのマニュアル化が難しい営業や、対応領域の幅が広くて複雑な生産管理などはこれからだ。
「業務の細分化には、いくつかの狙いがあります。一つは、ダイバーシティへの対応。1日5時間だけ、週3日なら働けるという人が出てきた時、一部だけお願いするなど、仕事の任せ方に多様性が出てきます。もう一つはキャリアパスの“見える化”。業務を細分化して明示すれば、社員が自分の能力が今どの段階にあるか、理解しやすくなります。ナノレベルのスペシャリティーを目指す当社にとって、技術伝承は、重要な課題ですから」
同社の研究開発部では、熟練者と若手をペアとする技術伝承を始めている。熟練者として指導にあたるのは、曾珍素氏。中国と日本の大学で材料工学を学んだ経験を持つ氏は、溶射の研究に携わって20年以上になる。
「溶射は、スプレー直前とスプレー後、対象付着の瞬間などそれぞれの段階で、コーティング材の性質がどんどん変わる、複雑な技術です。だからこそ、他の手法では得られない表面処理効果を生むのです」
曾氏の技術を受け継ごうと努力しているのが、𠮷和あかり氏。
「入社して日も浅く、わからないことだらけ。そんな私にも曾さんはとても丁寧に教えてくれるので、ありがたいです。今は先輩が行う研究のサポートが精一杯ですが、早く一人前になって曾さんに恩返ししたいです」
こうした、ベテランと若手を組み合わせて技術を伝承しようという試みは、営業部門でも始まっている。ベテランは視野の広さを活かし、顧客とのやり取りの中から新たなニーズを発見する。それを形にしようと、若手が機動力を発揮する。互いの長所を活かしながら、知見を受け継ぐスタイルが生まれている。
「この技術伝承体制を、他の現場にも広げていきたいですね」
と、佐古氏は力を込める。

熟練者と一緒に課題に取り組むことで、若手の成長を促進する

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